新古賀病院 消化器外科
2.消化管疾患(胃・大腸)

2.消化管疾患(胃・大腸)

胃がんの治療について

胃がんの手術は、腹腔鏡手術を中心に行っており、2023年度は46例の胃がん症例に対して 30例の腹腔鏡手術を施行しました。
保険適応である幽門側胃切除術、噴門側胃切除術、胃全摘術の全てに対して腹腔鏡手術が可能であり、早期がんだけではく進行がんに対する手術(2群リンパ節郭清)も習熱した医師により安全に行っています。
また、2024年からロボット支援下手術(通称:ダ・ヴィンチ手術)を導入しており、より出血が少なく安全に精密な手術を提供できるようになりました。
腹腔鏡手術やロボット支援下手術は、侵襲(体への負担)が少なく、在院日数の減少や術後早期の社会復帰を可能にします。
当院は、高齢者の進行胃がんの割合が多いですが、心機能や筋力などの全身状態を考慮しながら、免疫チェックポイント阻害薬(オプジーボやキイトルーダ)などの新規薬剤を含めた全身化学療法(術前化学療法・術後補助化学療法)を外来化学療法室で行っており、良性疾患である胃・十二指腸漬瘍穿孔などの緊急手術にも、積極的に腹腔鏡下手術で対応しています。

大腸がんの治療について

1.当院の大腸がん治療の特徴

  1. ①大腸がん治療ガイドラインに則った標準治療を行っています。
  2. ②当院では大腸がん手術を年間110例以上行っています。そのうち約80%がロボット支援下手術を含めた腹腔鏡手術を行っており、体への負担が少なく院期間も短いことが特徴です。
  3. ③2020年7月より直腸がんに対するロボット支援下手術、 2022年11月より結腸がんに対する同手術を導入し100例を超す手術件数があります。
  4. ④高度に進行した大腸がんでも、化学療法、放射線治療、手術を組み合わせて根治を目指します。
  5. ⑤化学療法は、大部分が外来化学療法室で専任スタッフのもと、通院での治療を行っています。

2.大腸とは

大腸は、食物の消化吸収を行う消化管の最後の部位を占めます。栄養の吸収に携わる小腸(回腸)がおわり、右下腹部にある盲腸からが大腸です。右上腹部に向かう上行結腸、右上から左に向かう横行結腸、左上腹部から左下腹部に向かう下行結腸、さらに左下腹部からSの字の形を描くS状結腸、S状結腸と直腸を結ぶ直腸S状部を経て肛門へとつながる直腸(上部、下部、肛門管)という順に食物は大腸を通過していき、最後に肛門から便となって排泄されます。

 


3.大腸がんの罹患の特徴

大腸がんの患者さんの年齢は50~75歳が多いのですが、発生頻度は高齢の方ほど高くなります。男女別では「男性:女性」が「1.6:1」と男性に多く発生します。
大腸がんは近年急激に増加しており、2020年「全国がん登録罹患データ」によると、男性で1位、女性で2位になっています。

 

4.大腸がんの広がり方

大腸がんは、粘膜の表面から発生し、大腸の壁に次第に深く侵入していきます。がんが粘膜下層より深く浸潤すると、リンパ管に入り込んでリンパ節転移を起こしたり、血管に入り込んで肝転移や肺転移などの遠隔転移を起こすようになります。

 

 

5.大腸がんの進行度(ステージ分類)

  大腸がんの進行度は、大腸の壁に浸潤している深さと、リンパ節転移の有無や程度、遠隔転移の有無によって決定されます。

 

大腸がん治療ガイドライン 2022版(金原出版)より作成

0期 がんが粘膜内にとどまる
Ⅰ期 がんが筋層にとどまる
Ⅱ期 がんが筋層の外まで浸潤している
Ⅲ期 リンパ節転移がある
Ⅳ期 血行性転移(肝転移、肺転移)または腹膜播種がある


6.大腸がんの治療

外科手術の方法は、おおきくわけて開腹手術と腹腔鏡手術(ロボット支援下手術を含む)があります。 以前は、大腸がんに対する手術では病気の進行度にかかわらず、腹部を大きく切開し(通常は15cm以上)、病変部位の大腸とリンパ節を摘出して、腸と腸とをつなぎ合わせる操作を行っていました。しかし、腹腔鏡手術では、腹部にできる創は、腹腔鏡を挿入するための穴、手術器具を挿入するための穴、切除した大腸を摘出するための小切開(通常は4-5cm程度)だけになりました。

 

 

開腹手術・腹腔鏡手術・ロボット手術における皮膚切開創の比較(直腸がん手術)

 

当院では、がんの大きさが極端に大きい場合や他臓器浸潤・癒着などで腹腔鏡手術の継続が困難な場合を除き、進行がんに対しても積極的に腹腔鏡手術を行っており、初発大腸がんの約80%以上は腹腔鏡手術を行いました。
2020年7月から、直腸がんに対しロボット支援下手術も導入しました。3Dモニターによる立体視、モーションスケーリング・手振れ防止機能、人間の手以上によく曲がる鉗子によって、深い骨盤の中でも正確で繊細な手術が行えることが期待されています。
2022年4月より結腸がん手術に対しても保険適応されたのをうけ、同年11月より結腸がん手術にもロボット手術を導入しました。
当院では、これまで通算100例を超えるロボット支援下大腸がん手術を行い、良好な短期成績を得ています。