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舌咽神経痛 特に血管圧迫症候群と外科治療
顔面痛の中で手術をすれば痛みがとれる疾患として、三叉神経痛の他に稀な疾患ですが舌咽神経痛があります。三叉神経痛とまぎらわしく、時々間違われる疾患ですが、間違った脳神経を手術しても直りませんので、しっかり正しい診断を行う必要があります。
症状として激しい痛みが喉から耳にかけてあり、その痛みは刺激で誘発されるため水を飲んだり食事をしたりすることができません。痛む部位が違うのみで、発作性に起こることや痛みの性状は三叉神経痛とほとんど同様です。
この病気の原因の多くは血管が舌咽神経を圧迫していることですが、稀に腫瘍(類上皮腫など)が存在し、舌咽神経を刺激して症状が出現していることがあります。
【類上皮腫による舌咽神経痛例 ※1・・・T2強調像、2・・・MRI拡散強調像、延髄の横に腫瘍が見られます】
【舌咽神経の圧迫血管、後下小脳動脈
※1・・・脳幹・小脳半球を前方正面より(右後下小脳動脈の上凸のループ)
2・・・小脳半球左側を後方斜めから(矢印:舌咽神経)】
この病気は典型的な症状が見られることとMRI検査所見から診断されます。MRI検査では、腫瘍(類上皮腫など)がないことを確認し、舌咽神経を圧迫している血管の有無を調べます。舌咽神経は細く、MRI検査でも描出しくにい脳神経なので、1.5テスラか3.0テスラのMRIで検査することが必要です。解剖学的に高い位置で起こった後下小脳動脈(小脳へ行く動脈の一つ)が舌咽神経を横切って走行する場合は、血管が神経を圧迫している可能性が大きいので、そのよう特徴的所見があれば神経血管圧迫の所見と判断いたします。
<舌咽神経例の画像所見>
症例1
【症例1・・・MRIでは舌咽神経近傍に存在する拡張した血管が確認できます。
右椎骨動脈造影では右後下小脳動脈は拡張し、ループを形成しています。
※1.2矢印:後下小脳動脈 1.2矢頭:舌咽神経、 3矢印:後下小脳動脈】
症例2
【症例2、 1・・・MRA正面像、2・・・MRI正面像
※矢印:上に凸の後下小脳動脈のループが舌咽神経が存在する場所にある。】
治療としては、まずは薬物治療を行います。テグレトールという特効薬を内服してもらいます。徐々に痛みが激しくなるとテグレトールの量を増やしても完全に痛みを抑えることができなくなります。このような段階にいたったら外科治療を行います。開頭手術を行い、血管が原因の場合は圧迫している動脈を移動させ舌咽神経に当たらないようにし、腫瘍の場合は摘出いたします。
前任地では動脈が圧迫していた12例と腫瘍が存在した1例を経験しました。顆窩経由法という特殊なアプローチで我々は手術しますが、13例、全例で痛みがとれました。手術治療が大変効果的な疾患ですので、激しい痛みで食事などができずにお困りの方は、是非脳神経外科を受診され相談されることをお勧め致します。
【顆窩経由法・・・左側小脳半球を後方より見たところです】