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転移性脳腫瘍
転移性脳腫瘍
転移性脳腫瘍とは、体の他の部位に生じた癌が脳に転移したものです。
肺癌や乳癌、大腸癌などからの転移が多くみられますが、体のどこにできた癌であっても脳転移の可能性はあります。
転移性脳腫瘍は年々増加してきており、これは診断技術の向上(CT:コンピューター断層撮影やMRI:核磁気共鳴撮像法の性能が良くなり発見しやすくなったこと)、原発癌の治療成績の向上(癌になっても長生きできるようになってきていること)、癌年齢人口の増加などが理由であると考えられます。
転移性脳腫瘍の治療には様々な方法があります。適切な治療を行うことで、転移性脳腫瘍によって命をおとすことが無い様にすることだけでなく、腫瘍によって低下した生活の質(ADL:activity of daily life)を向上させて有効な時間を過ごせるようにすること(または生活の質を低下させないこと)、を目指します。そのためには、早期診断と早期治療が最も大切です。
どのような症状がおこるのでしょうか?
「脳」は頭蓋骨という硬い骨に囲まれています。やわらかな脳は、頭蓋骨によって外部の衝撃から守られているのです。
しかし、このことが脳腫瘍の場合問題となります。体の他の部位にできた癌細胞は主に血流に乗って頭蓋骨の内側(脳や硬膜と呼ばれる脳を覆う硬い膜など)に転移します。腫瘍は時間と共に大きくなっていきますが、頭蓋骨の大きさは変わりません。つまり、腫瘍の大きさの分だけ頭蓋骨の中の圧力が高くなっていき(頭蓋内圧亢進状態)、脳が圧迫され始めるわけです。
この圧迫によっておこる症状として頭痛や吐気・嘔吐、意識障害があります。さらに圧迫が進行すると脳ヘルニア(脳組織が隙間に押し出される現象)を生じ、この段階までくると生命の危機に瀕した状態といえます。また、腫瘍によって脳組織が直接損傷されると、損傷部位に応じて様々な症状が出ます。代表的な症状としては片麻痺(片側の手足の麻痺)、失語症(言葉が出ない、言葉が理解できない)、けいれん発作などが挙げられます。
これらの症状は一般に進行が早いのが特徴です。
どのような検査を受ければよいのでしょうか?
ある程度大きな腫瘍であればCT検査でも発見は可能です。しかし、MRIが行われるようになってから、CTでは見つけることができないような小さな腫瘍も発見できるようになりました。小さな腫瘍を発見できる、ということは即ちMRIならば早期診断が可能ということです。小さな腫瘍を見逃さないために造影剤を使用したMRI検査が必須であると言えます。
転移性脳腫瘍の場合、転移が1ヵ所とは限りません。造影MRIでは薄い断層撮影を行い、小さな病変が隠れていないか詳しく調べると共に、腫瘍の大きさや場所などを多方向から撮影します。治療方法を決定する大きな判断材料となります。
時に、CT、MRIによって先に転移性腫瘍がみつかる場合があります。転移性脳腫瘍が疑われる場合や、手術で切除した腫瘍が転移癌であった場合には、全身の検査を行うことになります。
どのような治療方法があるのでしょうか?
転移性脳腫瘍に対する治療法としては、手術、放射線治療(全脳照射、定位放射線照射)、抗脳浮腫薬(脳の腫れを抑える薬)などを各々の状況に応じて組み合わせて行うことになります。
各治療法について
手術:転移性癌が画像検査で単発である場合や、多発であってもその中に大きな腫瘍がある場合には積極的に手術を行い、腫瘍をまず摘出します。
定位放射線照射
脳の限られた範囲に目標をしぼって放射線を照射する治療です。ガンマーナイフ、サイバーナイフ、エックスナイフなどの種類があります。腫瘍が3cm以下の場合に定位放射線照射を行うことができます。周囲の脳組織に対するダメージがほとんどないため、多発例や再発例にも用います。(当院では出来ませんので、手術後に他の病院をご紹介しております。)
全脳照射
術後再発の予防や、定位放射線照射が行えないほどの多発例に対して、進行を遅らせる目的で脳全体に放射線照射をする場合があります。しかし入院期間が2週間から1ヵ月半程度長くなるため、全身状態や予後を考慮し、適応を決定しています。
転移性脳腫瘍の治療は、脳だけでなく、原発性癌に対する治療や全身状態の評価などを考慮した上で治療を選択する必要があります。各科専門医と連携し、ご本人やご家族の希望を考慮した上で治療を進めていきます。
早期に発見できるほど、治療の選択、治療成績において有利であることは違いありません。癌の診断を受け治療中であるならば、まず1度は頭部の造影MRIを撮ることをお勧め致します。その上で、1度MRIで転移が見つからなかった場合でも半年から1年たったら再検査を、既に転移が見つかっている場合には3ヶ月に1度は検査を受けることをお勧め致します。
お困りのことや疑問などがありましたら、当科にご相談ください。